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タダセイによる「Luminescence 」
セルフライナーノーツ |

はじめに
the MOSTの五枚目のアルバム、ようやく出ました!!前作re:markから実に三年の時が経ってしまった…その間に、ピアノの石井彰が卒業という一大事が起こり、the MOST解散の危機か?!と巷で騒がれたとか騒がれなかったとか(笑)でも今だから言うけど、本当にあのときはもうだめかな、と思った…なにせそれまで約八年にわたってthe MOSTのサウンドを作り続けてきたピアニストが抜けるということは、the MOSTとして大きな痛手。これを機にいっそ解散したほうがすっきりしていいかも…と弱気になった僕。でも一応悪あがきしてみるか、ということで、盟友大坂昌彦に相談してみた。二人の共通認識としては、石井と同じ世代のピアニストはあり得ない、と。どうせ新たに入れるなら、リスナーも全く予想しないような新鮮な人選でないと意味がない、と。そこで彼の口から出た名前が「片倉真由子」という若干28才の、しかも女性。その時点で(2008年8月)彼女の名前はスケジュール表等で目にはしていたが、まだ共演したことも音を聞いたことも顔を見たことも(笑)なかった。だが、彼によるとthe MOSTのサウンドにぴったりの人材ではないかということだった。the MOSTのサウンドを熟知している彼が言うのだから、これは間違いないだろう!ということで、その時点で彼女に頼むことに決定。今思うとずいぶん大胆な決め方をしたものだと思うが(笑)それほど僕は大坂昌彦という人を信頼しているのだ。
彼女の詳しいプロフィールに関しては彼女自身のHPなどを参照していただくとして、僕はその経歴を聞いただけで逆に恐ろしくなった…洗足学園を卒業後、バークリー音大へ留学、さらにジュリアード音楽院にまで進み、あのケニー・バロン氏に師事するという、まさに音楽サラブレッド。ご両親も音楽家であり(サックス奏者だったお父様には僕もお世話になった)NYの今のジャズを体ごと体験している才女が、こんなおっさんがやってる変なバンド(笑)に果たして入ってくれるのだろうかという不安が大きく頭をもたげた。そんな不安を抱えながらも背に腹は代えられないということで震える手で彼女に電話をかけた(笑)。電話に出た彼女は非常に礼儀正しく、僕が勝手に想像した「NY帰りのくそ生意気な怖いもの知らずのピアニスト」ではなかった。彼女はthe MOSTのサウンドをよく知っていると言い、大坂昌彦にも師事していたこともあって、このバンドに加入して欲しいという申し出に「私でよいのでしょうか?もしよろしければ喜んでやらせていただきます」という答えをくれたのだった。その時点で彼女は既に超売れっ子ピアニストとしてライブハウスに連日出演していて、スケジュール的にも非常にタイトになると思われたが、彼女自身がセッション的なものばかりでなく、「バンド」に参加したいという強い希望を持ってくれていたおかげで話はトントン拍子に進み、新生the MOSTが始動することになったのだ。
加入が決まってすぐに、ある店のブッキングによって彼女と初共演する機会が訪れた。いわゆるワンナイトセッションではあったが、初めて会った彼女は非常に物静かで、言葉を選んで丁寧に話すという印象だった。ところがその演奏たるや!!女性ピアニストという括りではとても語れないほどの力強さ、しかし女性ならではの繊細さや歌心も持ち合わせるというスタイルで、しかもトラディショナルからコンテンポラリーまで幅広いボキャブラリーを持ち、さすがケニー・バロン直系!という感じで感服したのを覚えている。その日の帰りにthe MOSTの数多い譜面と音源を手渡し、12月にようやく一日だけ調整のついたリハーサルまでに予習しておいて欲しいとお願いしてその日は別れたのだが、そのリハーサルでも完璧な予習のおかげで非常にストレス無く音あわせができ、ホッと胸をなでおろした。the MOSTの難曲集をものの見事に弾きこなしてくれて本当にうれしかったのだが、本人によるとものすごい緊張だったそうだ(笑)そりゃそうだよね、元先生を含むオッサン三人に囲まれるか弱い女性(笑)オオカミの群れに放り込まれる子鹿の思いをしたことだろう(笑)
だが、明けて2009年の1月、新生the MOSTの初めての仕事となる10日間のツアーで、彼女は見事にバンドに溶け込み、新生the MOSTのサウンドを自らが切り開く役割を立派に果たしてくれたのだった。この人選は間違いではなかったばかりか、the MOSTを新しいベクトルへと導いてくれる女神を我々は手に入れたのだ!!いやあうれしかった。このツアーは。不安は大きな期待へと見事に切り替わり、バンド運営への情熱がまた一段と増したのだった。
そんな経緯を経て新生the MOSTとして一年余り活動したころ、やはりこのサウンドを記録に留めるべきだという思いが日増しに大きくなり、新しいレコード会社を探す日々が始まった。ご承知のように、現在音楽業界・CD業界は激変の時代を迎えており、CDを一枚制作するということが大変に困難な状況になってきている。ましてやこのバンドの指向するハードボイルドなサウンドが一般に広く受け入れられ大ヒットすると考えるレコード会社などあるはずもない(笑)途方にくれる毎日だったが、日野皓正QUINTETで長年付き合ったベーシスト金澤英明さんの紹介でラルゴというレコード会社と契約できることになり、三年ぶりの待望の新作をレコーディングすることが決定したのだ!金澤さん、ありがとう!!(号泣)
そして2010年4月、二日間かけてレコーディング終了。新作のアルバムタイトルは「Luminescence」。意味は、「物質がエネルギーにより励起され起こるルミネセンス(発光)現象の一つで、半導体などに電圧を加えて起きるもののこと。」すなわち、片倉の加入というエネルギーがthe MOSTに起こした発光現象ということと引っかけて付けてみた。前作以降、CD二枚分は悠にある楽曲の中から、厳選された11曲を収めた。メンバー全員のオリジナルのみで挑戦するスタイルは崩していない。だが、ハードな曲からクラシカルな曲、ラテンの曲や歌入りの曲まで(笑)多岐にわたる楽曲で構成されたこの新作は、あなたを決して飽きさせることがないことを約束します!!たっぷりとヘビーローテーションで聴いてください!!!!
楽曲紹介
1) Jackieeee(Seiji Tada)
アルバム冒頭を飾るこの曲は、僕が偉大なアルト奏者Jackie McLeanに捧げて書いた曲。彼が亡くなったとき、思わず「Jackieeee!!!」と叫んだのがタイトルに。先にタイトルが出来た曲と言ってもいい(笑)彼に対するリスペクトを僕なりに表現してみた。彼のサウンド、彼の作曲手法、彼のフレーズなどを僕なりに咀嚼して作ったつもりだが、微妙に変拍子が入ったりするところはthe MOST風に。我ながらアルバム冒頭にふさわしい曲だと思う。「さあ行くぜ!覚悟はいいか?」的な(笑)
2) Reminiscence(Seiji Tada)
アルバムタイトルチューンと勘違いされかねないタイトルなんだけど、実は違うんだな。ちょっとした引っかけ(笑)この曲は一曲目とはうって変わって対位法的な手法を取り入れてクラシカルなサウンドになった。僕にとっては特別な思い入れのある曲。大学最後の二年間、ほんとに多くのことを教わった我が師匠、岡山BIRDのマスター岡崎さんが2010年1月にガンのため亡くなってしまい、彼への恩返しのつもりで急遽作った曲。曲が出来たのはレコーディング直前。メンバーに聴かせたところ気に入ってくれてレコーディングすることに。タイトルの意味は「回想・追憶」。彼の元で研鑽を積んだ日々を記憶にとどめるために書いた、言わば私小説かな…
3) Simple Statement(Masahiko Osaka)
マサの曲はいつもオシャレ。で、難しい(笑)この曲も、コンテンポラリージャズのおいしい部分を見事に取り入れていて、とても自然に流れる曲なんだけど、いざ演奏してみると難しい、というミュージシャン泣かせの曲。でも、レコーディング初日の一曲目にワンテイクで終了した縁起のいい曲だよ(笑)個人的には、これをライブ一曲目にやるとテンションアゲアゲになるんだなあ…大好き!
4) Silver Rain(Shin Kamimura)
この曲はいかにも信ちゃんらしい美しいメロディーを持つ。タイトルに特に深い意味はないらしいんだけど、マサはシルバーな雨を(笑)想定しながら演奏してたよ。彼の素晴らしいシンバルワークを聴け!!雨が降ってるから!!アルバムの中で、僕的には一、二を争うくらい気持ちよくメロディーを吹けたかな。最後の信ちゃんのベースソロも必聴!
5) Rich Valley(Masahiko Osaka)
かっこいい〜〜〜!!!って感じでしょ?(笑)いかにもthe MOSTらしいというか。七拍子なんだか何なんだか(笑)このベースライン、超かっこよくない??いえ、かっこいいんですっ(笑)ドラムソロはドラム小僧たちよ100回聴きなさい!!!ちなみにタイトルの意味は、マサの住んでるあたりの地名から。洒落てます!
6) B’s Dance(Mayuko Katakura)
真由子がthe MOSTに加入してこの時点で一年三ヶ月。あっという間にthe MOSTに馴染むどころか、the MOSTのサウンドを支える立場になってくれて本当にうれしい!そんな彼女が初めてthe MOSTに提供してくれた曲がこれ。タイトルの意味は特に秘すが(笑)わかる人にはとっくにわかる(笑)で、中身は美しいメロディーと裏腹に極悪に難しい(泣)ピアニストらしい曲に脱帽です。で、ソロはベースとピアノにまかせて僕はメロディー担当(笑)いい曲でしょ?
7) URUME(Seiji Tada)
そんな真由子に捧げて、彼女の加入直後に作った曲がこれ。タイトルは、居酒屋で焼酎片手にウルメを食す愛すべき飲んべえ真由子に敬意を表して(笑)この曲もやはりthe MOSTらしい。自分で作っておきながら、演奏するのは至難の業だったりして(呆)でもレコーディングしてみると案外かっこいいかな〜なんて(笑)いいじゃん、セルフライナーなんだからさ(笑)
8) Cold Winter(Masahiko Osaka)
この曲はずいぶん前からレパートリーに入れていた曲だけどレコーディングの機会が無かった曲。マサが八ヶ岳のジャズフェスで何日か缶詰になった間に出来た曲だ。真冬の八ヶ岳ならではのタイトルとメロディーです。マサの曲作りの多彩さにはいつも脱帽する。それもこれもミュージシャンとしての引き出しの多さに起因しているんだろうけど…the MOSTのレパートリーの中ではホッと一息つける曲だな、うん。大変貴重です、うん。
9) Singing Angel(Masahiko Osaka)
我々の友人であり、the MOSTのゲストとしてたびたび共演していたボーカリスト越智順子が若くして急逝してしまったのは2008年7月27日。そんな彼女に捧げてマサが作ったレクイエム。本当に彼女は歌う天使だった…みんなに愛されて愛されて、生き急いでしまった彼女…今頃天国で本物のゴスペルを天使たちに聴かせているんだろうなあ…このアルバム、三曲目のレクイエム、心に浸みます。
10)The Last Phase Of The Moon(Shin Kamimura)
いつもの信ちゃんとはうって変わってゴリゴリな曲。最初のベースラインは自然にコルトレーンの世界にいざなってくれる。演奏する方も自然にそういうスピリットになるから不思議。ライブでも、演奏しながらどんどんトリップしていくのがわかる(笑)ライブでぜひ体験してみてください!!!
11)With A Smile(Shin Kamimura)
前作あたりから恒例化してきたthe MOSTシングアウトバージョン(笑)その中で、このところアンコールで必ず演奏する曲がこれ。信ちゃんの作った美しいメロディーを、会場全員で歌い倒す、という企画を半ば強引に行い続けている(笑)もはや常連さんはとっくにメロディーを覚えて、初心者に手本を示す役割を!いやあthe MOST、10年続けてきた甲斐があるってもんです(笑)アルバムでも全員で歌い倒し、パーカス叩き倒しました(笑)さあ皆さん、ご一緒に!!!!